こんにちは。緑のしおりの「パーシー」です。
モンステラが元気に育ってくれるのは嬉しいですが、大きくなりすぎて剪定(せんてい)が必要になること、ありますよね。いざハサミを入れたものの、このモンステラの切り口の処理ってどうすればいいんだろう?と不安になる方も多いかなと思います。
剪定した親株の切り口をそのままにして、そこから黒い状態になって枯れ込んだらどうしよう…。増殖させたくて水差しにした茎が、いつの間にかぬるぬるして腐るのは絶対に避けたい…。私も最初はそんな不安でいっぱいでした。
癒合剤のトップジンがいいと聞くけど、必ず必要なの?代用でシナモンや木工用ボンドも使えるって本当?伸びすぎた気根は切ってもいいんだろうか?など、いざ作業しようとすると、次から次へと疑問が湧いてきますよね。
この記事では、そんなモンステラの切り口処理に関するあらゆる疑問をスッキリ解決していきます。親株を病気から守る方法から、挿し木や茎伏せを成功させるコツまで、私の経験も踏まえて分かりやすく丁寧に解説しますね。
- 剪定で残った親株(もと株)の切り口を守る方法
- 挿し木や水差しを成功させるための切り口の準備
- 切り口が腐った(黒い・ぬるぬる)時の緊急対処法
- 癒合剤やシナモンなど保護剤の正しい選び方と使い方
モンステラの切り口処理:基本と親株保護
まずは、剪定によって鉢に残った「親株」側のお話です。これは植物にとって、人間でいうところの「外科手術」と同じ。傷口をしっかりケアしてあげないと、そこからバイ菌が入って弱ってしまうこともあります。ここでは、大事な親株を守るためのモンステラの切り口処理の基本を見ていきましょう。
剪定前に必須の準備と安全対策
「よし、切るぞ!」とハサミを持つ前に、絶対に欠かせない大切な準備が2つあります。それは「道具の消毒」と「樹液から身を守る対策」です!
1. 道具の消毒(滅菌)
モンステラを切るハサミは、作業前に必ず消毒(滅菌)してください。これは本当に重要です。
私たちが汚れたナイフでケガをしたら、そこからバイ菌が入って化膿しますよね。植物もまったく同じで、汚れたハサミで切ると、切り口に病原菌(カビや細菌)をわざわざ植え付けることになってしまいます。これが原因で切り口から腐敗が始まり、最悪の場合、株全体が枯れてしまうことにも繋がりかねません。
家庭でできる簡単な消毒方法
- 消毒用アルコール(エタノール):スプレーしたり、キッチンペーパーに含ませて刃を拭いたりするのが一番手軽で、ハサミへのダメージも少ないのでおすすめです。
- ライターの火で炙る:原始的ですが強力な方法です。ただし、刃が変色したり、切れ味が落ちたりする可能性があるので、高価なハサミにはあまりおすすめできません。
- キッチンハイター(次亜塩素酸ナトリウム):規定の倍率(例:200倍~500倍程度)に薄めた液に刃先を浸ける方法。殺菌力は非常に強力ですが、金属を腐食させる(錆びさせる)性質があるため、処理後は必ず真水でハイターをよく洗い流し、水分を完全に拭き取ってください。
2. 安全対策:樹液(シュウ酸カルシウム)の毒性
もう一つの非常に大事な注意点が、モンステラの「樹液」です。
モンステラはサトイモ科の植物で、茎や葉を切ると断面から白い樹液が出てきます。この樹液には「シュウ酸カルシウム」という成分が含まれています。厚生労働省のサイトでも、自然毒として注意喚起されている成分の一つですね。
このシュウ酸カルシウムは、目には見えない針のような形の結晶(針状結晶)をしていて、これが皮膚に刺さることで物理的な刺激となり、かぶれや炎症、強いかゆみを引き起こすことがあります。
樹液対策は万全に!
作業をするときは、素手は絶対に避けて、必ず園芸用のゴム手袋やビニール手袋を装着してください。もし樹液が皮膚についてしまったら、こすらずに、すぐに大量の水でよく洗い流しましょう。
特にペットや小さなお子さんがいるご家庭では、剪定した茎や葉、切り口から滴る樹液に触れないよう、作業場所や道具の管理に最大限の注意が必要です。
そして、使うハサミも大事です。できるだけ切れ味の良い園芸用の剪定ばさみを使いましょう。切れ味が悪い文房具のハサミなどを使うと、茎の組織を「切る」のではなく「押し潰す」ことになります。潰れた細胞は壊死しやすく、病原菌の格好のエサになってしまうので、道具選びも重要ですよ。
切り口の乾燥と殺菌はなぜ必要か
剪定した後の切り口を、なぜそのまま放置してはいけないのでしょうか?
理由はシンプルで、そこが「外部に丸裸でさらされた、大きなケガ口」だからです。人間なら血が固まってかさぶたができますが、植物の切り口は乾くまで無防備な状態が続きます。
この開いた傷口は、空気中を漂う無数のカビ(真菌)や細菌にとっては、栄養豊富な侵入口にしか見えません。特にモンステラのような太い茎を切った場合、切り口の断面積も大きいので、それだけリスクが格段に上がります。
もし切り口に病原菌が定着してしまうと、そこから組織が黒く変色し、腐敗がじわじわと茎の内部(維管束)を通って下(株元)へ進行してしまうことがあります。これを「ダイバック(枯れ込み)」と呼びます。一度こうなると、健康な部分まで切り戻すしかなくなり、株に大きなダメージを与えてしまいます。
そうならないために、「切り口を速やかに乾燥させる」こと、そして「殺菌・保護する」ことが、大切な親株を守るために何よりも重要なんです。
親株を守る癒合剤(トップジン)の使い方
親株の切り口を病原菌から守るために、最も信頼性が高く、園芸家が一般的に使用するのが「癒合剤(ゆごうざい)」です。
これは、植物の切り口専用に開発された「保護クリーム」や「絆創膏」のようなもの。さまざまな商品がありますが、中でも住友化学園芸さんの「トップジンMペースト」などは有名ですね。
癒合剤の主な役割は2つです。
- 物理的なバリアを作り、水や病原菌が切り口に侵入するのを防ぐ。
- (製品によりますが)殺菌剤が含まれており、傷口を消毒して腐敗を防ぐ。
トップジンMペーストは殺菌剤(チオファネートメチル)が含まれているので、保護と殺菌が同時にできて一石二鳥というわけです。
癒合剤を塗るタイミングが肝心!
ここでとても大事なのが、癒合剤を塗るタイミングです。焦ってはいけません。
- NG:剪定した直後。まだ樹液が滲み出ている状態。
- OK:剪定後、樹液が自然に止まり、切り口の表面が乾いてから。
なぜなら、濡れた状態や樹液が出ている上から塗っても、癒合剤がうまく定着せず、すぐに剥がれてしまうからです。これではバリアの意味がありません。
剪定したら、まずはティッシュなどで滲み出る樹液を(皮膚に触れないよう)軽く拭き取り、そのまま数時間〜半日ほど待ちます。切り口の表面が白っぽく乾いたのを確認してから、チューブから直接、または清潔なヘラや指(もちろん手袋着用)で、切り口全体を覆うように薄く塗り広げてあげましょう。
トップジンMペーストとは?
園芸店やホームセンターの薬剤コーナーでよく見かける、オレンジ色(または緑色や青色)のペースト状の殺菌・保護剤です。チューブタイプが多く、必要な量だけ出せて使いやすいですよ。モンステラだけでなく、バラや庭木の剪定後など、さまざまな植物の切り口保護に使えるので、ガーデニングをするなら一つ常備しておくと本当に便利です。
癒合剤の代用:シナモンと木工用ボンド
「剪定しちゃったけど、癒合剤なんて持ってない!」「今すぐ何かで代用したい!」という時、よく名前が挙がるのが、キッチンにある「シナモンパウダー」と、工具箱にある「木工用ボンド」です。私も気になって試したことがありますが、これらは専用品ではないため、それぞれ特性を理解して使う必要があります。
代用品1:シナモンパウダー
そう、あの料理やお菓子に使うシナモンパウダーです。意外に思われるかもしれませんが、シナモン(特にその香り成分であるシンナムアルデヒド)には強力な天然の殺菌・抗菌作用があると言われていて、オーガニック園芸の世界では昔から使われてきた知恵のようです。
- メリット:非常に手に入りやすく、天然素材なので(植物に対して)安心感がある。殺菌効果が期待できる。
- デメリット:あくまでパウダーなので、物理的な防水バリア機能は低い。水やりなどで簡単に流れ落ちてしまう。
使い方としては、乾燥させた切り口に、パウダーを直接たっぷり振りかけるか、清潔な指で軽く塗りつける感じです。癒合剤が手に入るまでの「応急処置」としては、十分アリかなと私は思います。
代用品2:木工用ボンド
小学校の工作で使った、あの白いボンド(酢酸ビニル樹脂エマルジョン)ですね。これは乾くと耐水性のある透明な膜になる性質を利用します。
- メリット:安価で手に入りやすい。乾燥すれば、強力な物理的防水バリアになる。
- デメリット:殺菌効果は一切ゼロであること。
ここが最大の注意点です。殺菌効果が全くないため、もし切り口の消毒が不十分だったり、すでに汚染されていたりした場合、ボンドで蓋をすることで内部に病原菌を封じ込めてしまい、かえって腐敗を悪化させる危険があります。
代用品の使い分け(あくまで私見です)
もし代用品しかないのであれば、個人的には「①まずシナモンパウダーで切り口を殺菌し、②その上から木工用ボンドで防水の蓋をする」という合わせ技が、代用する中では一番理にかなっているかな?と思っています。
ただ、これはあくまで裏ワザ的な方法です。ボンドは植物用に作られたものではありませんし、長期的な影響も未知数です。大切なモンステラを守るためには、やはりトップジンMペーストのような専用の癒合剤を使うのが一番確実で安心ですね。
剪定後の親株の置き場所と管理
切り口の処理が無事に終わっても、まだ安心はできません。剪定後のアフターケアも、親株の回復にはとても大切です。大きな手術(剪定)をした後は、植物も体力を消耗していて、非常にデリケートな状態ですからね。
- 置き場所:直射日光を避けた、レースカーテン越しの明るい日陰でゆっくり休ませてあげましょう。剪定後は、普段より光合成の効率も落ちています。強い日差しは葉焼けの原因になるだけでなく、株全体の水分を奪い、弱った株に追い打ちをかけてしまいます。最低でも1〜2週間は、静かな場所で「養生」させてあげるイメージです。
- 水やり:基本的にはいつも通り、土の表面がしっかり乾いたらたっぷりと与えます。ただし、切り口の処理が乾ききるまでは、傷口に水がかからないよう株元にそっと水やりすると、なお良いですね。
- 肥料:絶対にNGです!これは厳守してください。 弱っている時に肥料(特に化学肥料)を与えると、根がその濃い成分に負けてしまい、「肥料焼け」という脱水症状のような状態を起こして、かえって根を傷めてしまいます。回復どころか、致命傷になりかねません。肥料は、剪定後に新しい芽が元気に動き出し、成長が確認できるまで、最低でも1ヶ月は我慢してください。
慌てず、焦らず、モンステラの持つ生命力(特に気温が高い5月〜9月の「成長期」)を信じて、じっくりと見守ってあげましょう。適切な処理をすれば、やがて残した節から新しい芽が顔を出してくれますよ。
増殖・再生のためのモンステラ切り口処理
さて、ここからはガラッと視点を変えて、剪定でカットした「挿し穂(さしほ)」側のお話です。つまり、親株から切り離したパーツを使って、新しい株として増やすための処理ですね。
ここでの目的は、親株の時とは全く逆。切り口をガッチリ保護して塞ぐのではなく、むしろ切り口を健全に保ちつつ、そこからの「発根」を最大限に促すことがゴールになります。ここ、すごく大事なポイントなので、絶対に混同しないようにしてください!
【超重要】絶対に間違えないで!
増殖させたい挿し穂(カットした側)の切り口には、絶対に、絶対に癒合剤(トップジン)や木工用ボンドを塗らないでください!
あれらは「傷口を塞ぐ」ためのものです。これから水を吸い、根を出そうとしている切り口を完全に塞いでしまったら、挿し穂は水分を吸収できず、根も出せずに100%失敗してしまいます。親株の保護(塞ぐ)と、挿し穂の処理(発根させる)は、目的が真逆だとしっかり覚えておいてくださいね。
挿し木の成功を左右する「成長点」
緑のしおりイメージモンステラの増殖を成功させるには、まず「植物のどの部分を切るか」が最も重要です。闇雲に茎を切っても、芽も根も出てきません。ポイントは「節(ふし)」と「成長点(せいちょうてん)」という2つの組織です。
- 節(ふし):茎をよく見ると、少し膨らんでいたり、古い葉が落ちた跡が「V字」の模様になっていたりする部分があります。これが「節」です。モンステラは、新しい芽と、新しい根(気根を含む)が生まれる唯一の場所です。
- 成長点:その「節」のすぐ上(V字のくぼみのあたり)にある、ポチっとした白い小さな盛り上がり。これが「新芽のタネ」である「成長点」です。
増殖に使う挿し穂(挿し木や水差しにするパーツ)には、必ずこの「節」が最低1つは含まれている必要があります。もし節が含まれていない「節と節の間」だけの茎を水に挿しても、それはただの茎で、いくら待っても芽も根も出てきません。
カットする時は、親株側にもちゃんと「成長点」を残してあげ(新芽が吹くように)、挿し穂側にも最低1つ、できれば2つほどの「節」が含まれるように、節と節の間でカットするのが一般的ですね。
水差し(水挿し)で腐るのを防ぐコツ
緑のしおりイメージカットした挿し穂をコップや花瓶などの水に入れて発根させる「水差し(水挿し)」。土を使わないので手軽ですし、根が出てくる様子が目に見えるので楽しい方法ですが、「水がすぐに臭くなる」「切り口がぬるぬるして腐る」という失敗も、残念ながら非常に多いです。
腐敗の原因は、水中で雑菌(腐敗菌)が繁殖すること、そして水中の酸素が不足することです。これを防ぐコツは、とにかく「水を常に清潔に保つ」こと、これに尽きます。
水差しを成功させるための具体的なポイント
- 毎日の水交換:これが一番大事です!特に夏場は水が傷みやすいので、必ず毎日、新鮮な水に交換してください。雑菌が繁殖する前にリセットするイメージです。
- 容器も洗う:水の交換時に、容器の内側も指でこすって「ぬめり」をしっかり洗い流しましょう。ぬめりは雑菌の温床です。
- 切り口を乾燥させる:カットした後、すぐに水に浸けるのではなく、まずは風通しの良い日陰で3時間〜半日ほど切り口を乾かします。表面に薄い膜(カルス)が形成されるのを促し、腐敗リスクをぐっと下げることができます。
- 活力剤を使う(オプション):必須ではないですが、「メネデール」などの植物活力剤を規定の倍率(通常100倍希釈など)に薄めた水を使うと、植物のストレスが和らぎ、発根が促されると言われています。腐敗防止のお守り代わりにもなりますね。
- 葉をカットする(重要):大きな葉がついたままだと、根がないのに水分だけが葉からどんどん蒸発(蒸散)していきます。吸水と蒸散のバランスが崩れ、発根する前に挿し穂自体が干からびてしまいます。付いている葉をハサミで半分くらいの大きさにカットして、蒸散を強制的に抑えてあげましょう。
管理場所は、直射日光の当たらない、明るい日陰(リビングの窓辺など)がベストです。根気よく水を替え続ければ、やがて節のあたりから白い新しい根が伸びてくるはずですよ。
茎伏せで発根させる湿度管理
「茎伏せ(くきふせ)」は、節を1〜2個つけた茎(葉はなくてもOK)を、土や水苔の上に文字通り「伏せる」ように置いて発根・発芽させる方法です。水差しよりも場所を取りますが、成功率が高く、一度にたくさん増やせる面白い方法ですよ。
茎伏せの成功の鍵は、水差しとは対照的に、ダントツで「高温・高湿度」をキープすることです。
まず、湿らせた清潔な水苔や、挿し木・種まき用の土をトレーや浅い鉢に用意します。その上に、カットした茎(切り口は乾燥させておくとベター)を、半分が埋まるくらいに軽く押し込むように置きます。この時、茎を完全に埋めてしまうと、茎が呼吸できずに窒息して腐るので注意してください。必ず茎の半分は地上に出します。
そして一番のポイントは、その容器ごと透明なビニール袋に入れたり、食品トレーの蓋や育苗ケースのドーム蓋をしたりして、内部の湿度を80%〜90%以上に保つことです。ミニ温室を作るイメージですね。霧吹きもこまめにして、乾燥させないように管理します。
こうすることで、茎の乾燥を防ぎつつ、節にある「成長点」が刺激されて、発根・発芽が劇的に促されます。
用土は、水苔(ミズゴケ)が特におすすめです。水苔は「高い保湿力」と「優れた通気性」という相反する性質を併せ持っているため、過湿による腐敗のリスクを減らしつつ、高湿度を保つのに最適なんです。腐敗が心配なら、水差しと同様に、切り口を数時間乾かしてから伏せると良いですよ。
気根は切っても大丈夫?正しい処理
モンステラが大きく成長してくると、茎の節から「気根(きこん)」という、まるで太いロープのような茶色い根が伸びてきます。見た目がワイルドすぎて「これ、切っても大丈夫?」と不安になるかもしれませんね。
結論から言うと、邪魔な場所にある気根は切っても大丈夫です。モンステラは本来、他の木などに張り付いて登っていく着生植物。気根は、空気中の水分を取り込んだり、体を支えたりするための大切な器官ですが、これを切ったからといって、すぐにモンステラ本体が枯れてしまうことはありません。
ただし! 増殖(挿し木)の時は、この気根が超お役立ちアイテムに変わります。
気根が出ている節ごとカットして挿し木にすると、その気根が土や水の中ですぐに水分を吸収する「根」として機能し始めます。つまり、ゼロから発根を待つよりも、圧倒的に早く吸水活動がスタートできるため、挿し木の成功率が劇的に上がるんです。もし気根が出ている部分で剪定するなら、ぜひその気根を付けたまま挿し穂にしてあげてください。
もし親株に残った側の気根が邪魔で切る場合は、茎の付け根ギリギリで切るのではなく、少し(数センチ)残して切るのがおすすめです。付け根ギリギリで切ると、その傷口から腐敗が茎本体に広がるリスクがゼロではないため、安全マージンを取るイメージですね。
切り口が黒い・ぬるぬる時の切り戻し
親株の切り口が乾かずに、いつまでもジメジメして黒くなってきた…。水差しにしている茎の先端が、ぬるぬるしてドロドロに溶けてきた…。
これは残念ながら「腐敗」が始まってしまったサインです。植物の「壊疽(えそ)」のようなもので、放置すれば腐敗はどんどん進行し、個体全体が死んでしまいます。
でも、まだ諦めないでください!初期段階であれば、腐敗は「切り戻し」という外科手術で対処できます。
緊急対処法:切り戻し
やることは一つ。腐った部分を完全に取り除くことです。
- 清潔な刃物を用意:必ずアルコールなどで消毒した、切れ味の良いカッターやハサミを使います。(この時も樹液に注意!)
- 腐敗部をすべてカット:黒い部分、ぬるぬるする部分、ドロドロに溶けた部分を、「もったいない」という気持ちを捨てて、躊躇せず全部切り落とします。
- 断面を厳しく確認:切り口の断面をよく見てください。少しでも茶色い点や変色した部分が残っていたら、そこから再び腐敗が進行します。断面が真っ白(または健康な薄緑色)のキレイな組織だけになるまで、しつこく切り戻しを続けてください。
切り戻しが完了したら、その新しい切り口をもう一度殺菌・保護します。
- 挿し穂(水差しなど)の場合:切り戻した切り口に、殺菌効果のあるシナモンパウダーをたっぷりまぶし、再度しっかり乾燥させてから、新しい清潔な水(または用土)で再スタートします。
- 親株の場合:切り戻した切り口をしっかり乾燥させた後、今度こそ失敗しないよう、癒合剤(トップジンMペーストなど)で厳重に蓋をして保護します。
腐敗の根本原因を見直そう
腐敗が起きたということは、それまでの管理環境や作業手順に何らかの問題があった可能性が非常に高いです。
- 水差しの水を本当に毎日替えていましたか?
- 土挿しや茎伏せの用土が、ビショビショの「過湿」状態で、茎が呼吸できていましたか?
- 作業した時期が寒すぎ(特に冬場)ませんでしたか?
特に冬場の増殖は、気温が低すぎて植物の活動が鈍く、発根する力よりも腐敗するスピードが勝ってしまうリスクが非常に高いです。モンステラに関する全ての作業(剪定・植え替え・増殖)は、やはり回復力・成長力が最大になる5月〜9月の「成長期」に行うのが、何よりも一番安全で確実ですね。
モンステラ切り口処理の重要ポイント
最後に、これまでのお話を総まとめしますね。
モンステラの切り口処理は、とにかく「①親株(残る側)」と「②挿し穂(増やす側)」で、やるべきことが正反対だということが一番のポイントです。ここさえ間違えなければ、大きな失敗は防げます。
【総まとめ】目的別:モンステラ切り口処理の比較表
| 対象 | 目的 | やるべき処理 | 絶対にやってはいけない処理 |
|---|---|---|---|
| ① 親株(残る側) | 切り口の保護・殺菌
(傷口を塞ぐ) |
・清潔な刃物で切る
・切り口を乾燥させる ・癒合剤(トップジン)を塗る ・(代用)シナモン、木工用ボンド |
(特になし)
※ただし肥料は厳禁 |
| ② 挿し穂(増やす側) | 発根・吸水の促進
(傷口から根を出す) |
・「節」を必ず含める
・(必要なら)葉を減らす ・切り口を乾燥させる ・清潔な水や用土に挿す |
癒合剤・木工用ボンドを塗る
(切り口が塞がり、発根・吸水不可) |
この違いさえしっかり押さえておけば、剪定も増殖ももう怖くありません。
モンステラは、原産地では厳しい環境でも育つ、本当に生命力が強い植物です。私たちが少しだけ正しい知識を持ってサポートしてあげれば、親株はすぐに新しい芽を出し、切り離した挿し穂は新しい株として元気に育ってくれるはずです。
今回ご紹介した方法は、あくまで私「パーシー」の経験や、一般的な園芸情報に基づいています。植物の個体差や、ご家庭の管理環境によって、結果は異なる場合があります。
特に、癒合剤や活力剤などの薬剤(トップジンMペースト、メネデールなど)を使用する際は、必ず製品のラベルに記載されている使用方法や注意事項をよく読み、正しく使用してくださいね。農林水産省も農薬の適正使用について注意喚起していますので、安全な取り扱いを心がけましょう。
もし深刻な腐敗や、害虫、病気が疑われる場合は、ご自身で判断せず、お近くの園芸店や植物に詳しい専門家に相談することも検討してください。
ぜひ、ポイントを押さえたモンステラの剪定と増殖にチャレンジして、あなたのグリーンライフをもっともっと楽しんでくださいね!


